| back 七夕 今日は七夕だ。 七夕祭りに行く予定はないけれど、こういったイベントに便乗してデートの約束を取り付けるのは簡単だった。 配達業の拓海は残業することも頻繁だ。 けれど、『残業だって言われたら”七夕だから”って渋ってみろよ』とアドバイスした結果、やはり残業免除になったそうだ。 「な、大丈夫だっただろ」 笑いかけると拓海は首を傾げて 「はぁ。でも、どうして七夕だからって残業しなくて済んだんだろ・・・。先輩、ニヤニヤしながら『頑張れよ』って言ってたし、変なの」 と真剣に考えている。 「だから、それは七夕だからだよ」 「????」 「七夕デートとか、七夕コンパとか、七夕って響きは地味だけどイベントは意外と多いんだぜ。お前もきっとそういうふうに見られたんだろうな」 「オレが?」 「女にデートの申し込みするにはもってこいの日じゃないか?」 「あ・・・織姫と彦星・・・」 「そう、愛に飢えた男と女の日」 「愛に飢えたって・・・なんかその言い方おかしいですけど」 「おかしくなんかないさ。オレだって餓えてるんだぜ」 拓海は瞬時に顔を赤くした。 「りょ、涼介さんも・・・?」 「オレはお前が欲しくてたまらない。いつだってそばにいて欲しい」 「えーと、あの・・・」 「毎日餓えてんだよ」 狭いFCの中、身を乗り出すと拓海は少し身じろいだが、それでもギュッと目を瞑ってキスを待っていた。 (帰したくねぇな) 涼介は唇をそっと重ねながらも残念に思った。 仕事から帰ったばかりの拓海を拾って秋名湖畔に来たけれど、あまり遅くならないうちに家に帰さなければいけない。 明日は平日。拓海は仕事だし、涼介も外せない実習があるのだ。 (溺れるのは簡単だが・・・) 織姫と彦星が年に一度しか会えないのは自業自得。 愛にうつつを抜かしたせいだ。 (オレはそうはなりたくないぜ) 拓海に愛想を尽かされないようにするのは当然のことだが、周囲からも拓海の恋人として認められる存在にならなければ。 二人の間に大きな河を流されても、平然と渡っていける橋を造ってしまえば何の問題もないのだ。 「愛してる」 柔らかい唇を何度もついばんだあと、涼介は拓海の口元に囁いた。 拓海の喉がゴクリと鳴り、そして小さく「オレも」と口が動いた。 子供の頃から七夕には特別な思い入れなんてなかった。 けれど、拓海という人間に出会ってしまった今ではいろいろと考えさせられる行事になった。 短冊に願い事をしたためるならただひとつ。 『拓海と一生を共に過ごせるように』 しかしそれは他力本願でしかないから、結局のところ自分に力を付けるしかないのだが。 拓海と一生を共に過ごせるように、オレはオレのやり方で進むだけだ。 そう心の中で自分に言い聞かせながら涼介は拓海の肩に手を回した。 END 「セブンの日」をテーマにしようか悩みましたが「七夕」にしました。 大人な考え方をする涼介が書きたかった・・・。 拓海のことしか考えていない涼介が好きです。 2005.07.07 back |