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アングル





拓海は夢見心地な気分で、隣で眠る恋人の顔を見つめていた。

かっこいい

その一言に尽きる、高橋涼介の顔。
起きていればその眼差しにドキッとして自然と顔が赤くなってしまうから、まじまじと眺めることは難しい。けれど眠っている間はその端正な顔をじっくり見ることが出来る。時間も忘れて見惚れてしまうくらいきれいな顔。

・・・どうしてこんなに格好いいんだろう

拓海は考える。「遺伝子の組み合わせだからな」と涼介は言っていたが、そんなのは不公平だと思う。涼介は顔も良ければ頭も良いし、おまけにスタイルだって抜群だ。金持ちだし、車の運転だって誰にも負けない。「遺伝子だけじゃない。オレだって努力したから今のオレになったんだぜ」拓海の愚痴に対して涼介はそう笑って答えたことがある。
「環境に甘えてただ流されるままに育っていたらぶくぶく太っていただろうし顔もたるんでいただろうな。勉強をしなかったら大学は勿論高校進学だってやばかったぜ。親のすねかじりの甘ちゃんになっていたかもしれないし・・・間違っても拓海は俺を好きにはならなかっただろうな。」
あの時は涼介の言葉を聞きながらいろいろ想像してみた。頭が悪い涼介、太った涼介・・・けれど想像しようとしても無理だった。頭に浮かぶのは格好いいままの涼介だ。

努力かぁ・・・

自分は特に努力とかしなかったけど、普通に育ったと思う。太ることもなかったし高校だって入学できたし・・・ごく人並みだけど・・・。涼介のことだから、いくらなんでも普通に生活していれば充分格好良かったはずだ。
やっぱり不公平だ。元の造りが違うんだから。

考えているうちに体がぬくぬくしてくる。恋人から伝わってくる温もりが眠りに誘い込むまで、拓海はずっと涼介の寝顔を眺めていた。





涼介が目覚めたとき、隣で眠る拓海はスヤスヤと寝息を立てていた。
ラブホテルのカーテンは充分に遮光機能を果たしている。ましてや山の中に建っているから余計に陽の光が入りにくい。空調の音も影響して、あらゆる感覚が麻痺してしまう。もちろん、時間の感覚は時計を確認するまで戻ってこない。
7時半か・・・。
枕元のデジタル時計が薄いグリーンの光で教えてくれる。
配達の必要がない安心感のせいか、拓海が起きる気配はない。
こういう時、涼介は拓海の顔や体をじっくり観察している。まだ寒い季節なので拓海の肩から下は掛け布団の中に収まっている。
相変わらず色っぽい唇してるよな・・・
拓海の、赤く少し厚めの小さな唇はわずかに開いている。
そこを眺めているとどういう訳か無性にキスしたくなってしまう。そうなると公共の場でもキスしたくなるのだが、拓海が嫌がることは出来ない。我慢に我慢を重ねて、二人きりになったときに思う存分その感触を堪能するしかないのだ。
拓海はよく「涼介さんは格好良すぎて・・・・反則です」と言う。けれど涼介にとっては拓海の柔らかい肌や少し眠そうな大きな目やこの唇こそが反則だと思う。
分かってないな・・・魔性なんだぜ、お前・・・
人差し指で拓海の唇をつついてみる。ぷにぷにと弾力があってしっとりと潤っている。
こんな唇の女なんか滅多にいないんだぜ・・・
リップや口紅やグロスなどの化粧品を使わなくてもこの唇を天然で維持している恋人は、涼介にとってどんな女よりも可愛く愛しい存在だ。今は閉じられている瞳もどういう訳か潤んでいることが多い。
それが余計に誘っているように感じて、涼介は溜まらなくなる。
誰にも渡さないからな・・・
自分の胸元に寄り添うように眠る恋人に、そっと唇を重ねてみる。
「ん・・・」
唇が離れると、小さな吐息が漏れた。それに続いて何度かの瞬き。
「あ・・・おはようございます・・・」
細く開いた目で涼介を確認すると慌てて挨拶をしてくるのがまた可愛い。まだ頭もはっきりしていないだろうに、自然と出てくる言葉は拓海の育ちの良さの現れだろう。
寝ぼけた顔を見られているのが恥ずかしいのか、ゴシゴシと両目を擦る仕草もまた可愛い。
「おはよう」
まだ覚醒し切れていない拓海の唇に再度キスをする。
触れるだけで我慢しようと思ったが、せっかく時間があるのだから先を我慢することもないだろう。そう思った涼介は、無防備な歯列の間に舌を潜り込ませて拓海の舌を絡め取る。その甘さにウットリと体の力が抜けたのを見計らって、拓海の体を自分の上に抱え上げた。
「何・・・」
唇が離れてしまったのが不満なのか、拓海は困ったように目を開けた。
「感じた?」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて見上げる涼介に、拓海の顔はみるみるうちに赤く染まった。眠る前の行為で涼介に強いられた体位を思いだしたのだろう。
「上から見下ろすお前は可愛いけど、見下ろしてくるお前も色っぽくて来るもんがあるぜ」
すっかりその気らしい涼介の言葉を頭の中で繰り返しながら、拓海はぼんやりと考える。
・・・・・・オレは見下ろされる方が好きなんだけどな・・・・・・
征服されている感じがするから、などと言えない拓海は黙って涼介を見つめる。けれどやっぱり視線を交えていると恥ずかしくなってしまう。涼介と至近距離で見つめ合うなんて、この先出来そうにない。
行き場に困った視線を涼介の首筋に移していると、涼介が密着している股間を更に押し付けてきた。
堅さを増した涼介の存在を感じて拓海の腰は自然と引けてしまう。
「こっち向けよ」
「だって・・・」
「やってもいいか?」
即物的な涼介の言葉に拓海はますます赤くなる。
「さっき2回もしたのに・・・」
「寝る前の話じゃないか。それに2回しか、だろ?お前の方が若いんだからもう少し積極的になってみろよ」
「そっ・・・そんなの無理ですっ」
「淡泊だな」
・・・こんなこと言っていても涼介さんはどのアングルから見ても格好いいし・・・求められれば嬉しいし・・・強引にされれば上も下も関係ないかな・・・
涼介の言葉に慌てさせられても結局は言われるままに身を任せてしまうのだと、拓海は自覚している。
「どうする?お前だって濡れてるぜ?」
ほら、ここ。と、涼介の太股が動き、拓海自身を刺激する。ぬるりとした感触がして、濡れているのが分かった。自分がとんでもなくやらしいみたいで恥ずかしい。
「今更恥ずかしがるなよ」
背中に回されていた手が拓海のやわらかい尻に回される。
「やっ」
「ほら、キスして・・・」
「んっ」
やんわりと尻を揉まれて言われるままに動いてしまう。自分からするキスに慣れることはないけれど、時々だったらしてもいいかと思う。
「可愛いぜ・・・拓海・・・」
楽しそうに笑う涼介を見下ろして、拓海は思った。
涼介さん・・・可愛いかも・・・
格好いい涼介もいやらしい涼介も、可愛い涼介も好きだ。どんなアングルでも自分を見てくれる涼介が大好きなのだ。
「チェックアウトまでまだ1時間以上あるんだから何回でもイかせてやるからな・・・」
忙しなく動きだした涼介の愛撫に意識を飛ばされてしまった拓海を見上げて、涼介は満足そうに笑った。





                                                     END







イニD部屋1作目SSです。
私の目指す涼拓はこんな感じで・・・どうでしょう?



                                         
2004.03.15


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